エコハウス紹介
下川町はどんなところ?
旭川の北にある人口3700人ほどの小さな町。北海道の中でも特に冬が寒いことと、スキージャンプの葛西選手や岡部選手などのオリンピック日本代表が人口あたりで日本一なことでも有名です。
林業を基幹産業にした循環型森林経営のモデルとして、2008年には国の「環境モデル都市」2012年には「環境未来都市」の認定を受けるなど、環境最先端のまちとしても全国に知られています。
深い森の中の不思議な小箱
下川町のエコハウスは町のはずれ、森林組合による手入れの行き届いた深い森のなかに佇んでいます。お隣の五味温泉に予約すればいつでも宿泊体験ができるので、涼しい夏だけでなく氷点下30度にもなる真冬にも、エコハウス体験ができます。
建物は、札幌で活躍している櫻井百子さんが設計した不思議な黒い箱。全国にある22のエコハウスで箱の形は、ここと宮古島の白い箱の二つだけ。一番北と一番南にあるエコハウスが四角なのには訳があります。下川では屋根に雪を積もらせて室内の温度を保ち、宮古島では屋根で日射を反射して夏の暑さを防ぎます。
徹底した断熱性
すべて下川町の森の木(FSC森林認証)で建てられ、外壁はカラマツを森林組合が開発した木酢酸を浸透させて燻煙した耐久性の高い板張り、床下には町の特産の炭が敷きつめられて外気をここに通してから室内に給気しています。暖房と給湯の熱源は、地中熱ヒートポンプと下川産の木質ペレットを気温によって使い分けています。
大きな窓の明るい室内はアルゴンガス入りの複層ガラスのおかげで、真冬でも寒くありません。建物の外皮は、屋根はセルロースファイバー500ミリ、外壁は合計300ミリのウッドファイバーボード、基礎は200ミリのFP板という断熱材で囲まれていて、断熱性能はQ値0.8w/㎡K、UA値0.39 w/㎡Kとたいへん優れています。もっと詳しい性能を知りたい人はこちらへ。
内部は引戸を開放すれば部屋がつながるようになっています。宿泊体験者の一番人気は檜浴槽のある露天風呂のような浴室でしょうか・・・。しっかりした外皮の中に大らかな空間があることで、厳しい自然の中でもエコハウスに必要な技術を実感できます。
見学・宿泊について
当エコハウスの宿泊は、五味温泉で受付を行っています。
五味温泉
Tel : 01655-4-3311
http://gomionsen.jp/mikuwa/
見学やお問い合わせの際は、下記まで電話にてご連絡をお願いいたします。
環境未来都市推進課 環境未来都市推進グループ
Tel : 01655-4-2511
活動の状況
どんなに素敵なエコハウスができても、資源を無駄にする使い方をしてしまったら意義が半減してしまう…。建物のありかたも大切だけど、それを使う人々の意識はもっと大切! 竣工したら、今後エコハウスを使う地域の方々と、気づきのあるような勉強会を実現したい。そんな思いは、役場の地域振興課、ふるさと振興公社のクラスター推進部、地域学会であるしもかわ学会のメンバーと、フリーライターで楽エコ生活家のはらみづほさんの協力を得て、「暮らし楽しみ発見塾」という形で実現できることになりました。
講師は毎回下川町在住の方にお願いし、セミナーで提供する食べものは、出来るだけ地元の食材でまかなうなどこだわりました。身近な暮らしの中から楽しく環境に優しい丁寧な暮らしのヒントを持ち帰っていただくと同時に、地元のネットワークを広げていく出会いの場になれば…。という思いを胸に、5回シリーズのセミナーを始めました。
できるだけ環境への負荷を少なく運営するため、役場前から相乗りバスを運行したり、材料を調達するのに前日から走り回ったり、手作り感あふれるセミナーは徐々に地域の方にも浸透して、毎回新しい参加者を迎えながら、楽しく開催することが出来ました。
その様子を、少しでも多くの方々に知っていただくため、毎回「発見塾つうしん」を発行して、周知にも努めました。たった5回のセミナーでしたが、終了してからも、参加者の中から「特別編」として発見塾を引き継いでくださる方が出てきたり、セミナーでエコハウスを初めて訪れた方々がその空間を気に入って宿泊体験してくださったり、楽しみだけでなく素敵な人材も発見しながら、地域にちょっとした種まきが出来たのでは…と思っています。
設計者の意図
エコハウス建設に関わるプロポーザルコンペが行われる少し前にドイツのエコロジカルな取り組みを肌で感じるエコツアーに参加していました。建築主体というよりは環境に配慮した街づくりや具体的な取り組みを見学するツアーでしたが、ちょうど住み慣れた札幌と近いドイツの気候のなかで、極々普通に300mm以上断熱が行われている太陽エネルギーを効率的に取り入れた高断熱高気密のパッシブハウスに触れ、自分が住宅の依頼を受けたらそんな環境の建物を思いっきり設計したいと、その後常々考えていました。
また、子育てを通して食事の添加物や食材の産地に気を使うように、住まいの素材にも気を使うべきと考えるようになり、その思いを発揮できるようなチャンスを伺っていた中、環境省のプロジェクトを知り、下川町で行われた勉強会に2日間参加しました。
勉強会では、下川町でずっと行われてきた循環型森林経営がどんなもので、森から工場までつながるプロセスを現地を実際にご案内いただき、それに携わる情熱的な下川の方々、決して資源を無駄にせず、隅から隅まで使い尽くす意気込みと実践されている様子をかいま見て、心から感動し、下川に作るエコハウスは町の取り組みがたっぷり盛り込まれたものでなくては! と計画したのでした。
それを大変好意的に受け止めて協力して下さる、町の方々の存在は大きく、大変感謝しています。そうして実現したエコハウスは地元の素材を充分に使い切る、下川の取り組みがそのまま形になったような住まいとなりました。身近な素材と技術を使い、システムに頼り切らないシンプルなライフスタイルを支える住まい。長く大切に使う丁寧な暮らしを通して、環境にも、人にも優しい負荷の少ない建築でありたい。使うエネルギーは身近な自然エネルギーを適材適所で。私の考えるエコハウスはそれにつきると思うのです。
設計
- アトリエmomo
-
櫻井百子
川崎芳弘(設計協力)
アトリエmomo
〒064-0959
北海道札幌市中央区宮ヶ丘2丁目1-1
ラファイエット宮ヶ丘303 Platz.内
Tel : 011-640-8411
Fax : 011-640-8422
Mail : atelier.momo@me.com
https://www.facebook.com/ateliermomo.arc
建築概要
建物概要
構造・階数
木造軸組・2階建・ベタ基礎
敷地面積
916.42㎡
建築面積
177.46㎡
延べ面積
249.30㎡
外皮面積
541.38㎡
主要な部位
屋根〜天井
鋼板0.4・アスファルトフェルト20kg・構造用合板12・通気層100・構造用合板12・セルロースファイバー500吹込・ポリフィルム0.2・JPB9.5・WEP塗装
外壁〜内壁
木酢液浸漬燻煙処理カラマツ18・通気層18・透湿防水シート0.2・ウッドファイバーボード100・構造用合板9・ウッドファイバーボード200・ポリフィルム0.2・JPB12.5下地・珪藻土3塗り
床〜地盤面
炭粉混入モルタル30・シンダーコンクリート50(床暖房パイピング)・土間コンクリート150・FP板100×2・調整砂30・砂利100・ポリフィルム0.2
開口部
建具の構成
既製木製断熱サッシ
ガラスの仕様
トリプルガラスダブルLow-Eグリーン(アルゴン封入)
自然エネルギー
太陽光発電
0.56kW・壁面設置
太陽熱利用
床モルタルへのダイレクトゲイン
地中熱利用
①:地中熱HP(暖房能力10kW:COP=3.7)
消費エネルギー
電気
①の地中熱HPによる温水循環式暖房
灯油
③:給湯用ボイラー(7kW)・給湯用の補助熱源として使用
主要な設備
バイオマス燃料
④:ペレット給湯ボイラー(14.9kW)・給湯用の主熱源として使用
予備や展示用の設備
⑤:ペレットストーブ(5.6kW)
暖房方式
①の温水循環による、土間床暖房、床下からの給気の際のファンコンベクターへの加熱
補助暖房
⑤のペレットストーブ使用
蓄熱 床下空間利用
土間床への温水床暖房からの蓄熱
冷房方式
なし
全般換気方式
第1種換気・床下ファン(①の熱源から温水を循環させることで外気を予熱)によって給気し、自然排気口より排気
給湯方式
④のペレットボイラーと貯湯槽500Lを組み合わせた給湯システム。もしくは③のみに切り替えて使用。
環境性能
| 熱損失係数 Q値(平成11年基準値) | 0.8W/㎡K(1.6) |
|---|---|
| 夏期日射取得係数 μ値(平成11年基準値) | 0.076(0.08) |
| 外皮平均熱貫入率 UA値(平成25年基準値) | 0.39W/㎡K(0.46) |
| 冷房時の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mC値 | 16.50W/㎡K |
| 暖房期の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mH値 | 22.47W/㎡K |
| 実開口面積比率・開放面積比率 | 13.3%・42.1% |
| 相当隙間面積 C値 | 0.7㎠/㎡ |
| 太陽光発電パネル容量 | 0.56 kW |
| 模擬居住調査による一次エネルギー消費量 | 206.5 GJ/年 |
| 模擬居住調査によるCO2排出量 | 8 ton/年 |























