エコハウス紹介
飯田市ってどんなところ?
長野県の南部、南信州飯田市のエコハウスです。南アルプスと中央アルプスの山々に囲まれて、「暴れ天竜」として知られる天竜川がつくった渓谷の景観にも恵まれる自然豊かなところです。内陸性盆地型気候で冬期の晴天率が高く日照時間が長いため全般的に温暖な気候ですが、寒暖の差が激しく、夏期の暑さ、冬期の冷え込みは厳しい地域です。
市街地で暮らす工夫があふれたエコハウス
飯田市エコハウスは市街中心地のりんご並木に面して建てられました。玄関は街路に向かって大きく開き、昔から人が歩く道「裏界線」とつながる南東角には街角ミニ広場を設け、歩行者が安らぐ空間をつくっています。りんご並木に面した東面には大きな窓があります。家と街をつなぐ窓は、暑い日差しや街の喧噪も入れてしまうので、遮熱格子や断熱障子、植生メッシュなどで周囲の環境に対して「開いて閉じる」ための丁寧な工夫がなされています。
敷地は東面を街路に面して南北27m、東西8m弱と細長く、さらに南側には3階建てのビルが隣接しています。自然エネルギー利用には難しい土地ですが、南棟と北棟に分けそれぞれに異なる性格に仕立てた市街地型エコハウスとして解決しました。日当りの良い北棟は屋根で太陽熱を集め暖房に使います。日陰になる南棟はストーブの熱を循環させて蓄熱します。この建物の特徴は高い断熱気密性能と蓄熱ばかりではありません。夏と冬、昼と夜、在宅時と不在時など、自然エネルギーの利用モードを住まい手が切り替え、住み良い環境を自分でつくり出すライフスタイルの提案です。
広い玄関の小さな坪庭にミストシャワー、お風呂の脇の木のテラス、古井戸利用の浸透桝など小さな工夫がちりばめられています。
準防火市街地での木造の試み
構造は地元の根羽杉をふんだんに使い、渡りアゴ構法で組み上げた軸組です。外壁は準防火地域の規制に対応した防火性能を持ち、杉板、塗壁の仕上げでつくっています。市街地での木造の家の街作りを感じさせてくれます。
見学・宿泊について
当エコハウスを見学希望の方は、電話かFax、またはメールにてご連絡をお願いいたします。
飯田まちづくりカンパニー
Tel : 0265-21-1212
Fax : 0265-21-1252
Mail : tmo@machikan.jp
エコハウス
Tel / Fax : 050-3583-1583
Mail : eco_house@mis.janis.or.jp
※宿泊は実施しておりません
活動の状況
開館以来、毎年8000人を超える人々が訪れるりんご並木の有名どころになっています。当初はコーディネーターを案内役として環境と共生する住まい方の視察や建物見学を主に行っていましたが、飯田市の環境を活かした食や手仕事を体験する企画として『エコカフェ』を毎週開催し、新たな来場者を迎えています。
地方であっても市街地に建つ貴重な木造空間での長時間滞在は、肌感覚での気持ちの良さを伝えることが出来ています。
もちろん、朝昼晩の一日三回の室内外の温度・湿度記録取りは欠かしません。太陽光の集熱量も自動で記録しています。
冬期の晴天率の高い伊那谷の気候を取り込み、ペレットストーブと併せて、本年度「信州あったかシェアスポット」に登録されました。
設計者の意図
エコハウスに込めた五つの思い
まちなかにある気楽に立ち寄れる木組みの空間。しばらく滞在すると地元の杉に囲まれた気持ちよさが視覚的にも肌感覚でも感じられ、そこでいろいろな人とふれあう事も出来る居心地の良い家。
都会風をかじった洒落た建物が並ぶ地方都市飯田市のシンボル、リンゴ並木に合法的に出来た木造らしい外観。準防火地域にあって木造まちづくりを強烈にアピールする。
天の恵み(太陽光)と、地の恵み(土間の地中熱、湿度)を、最大限活かした上で、足りない部分に最新の考え方を導入する。エコハウスを頭で考えるのでは無く、環境に対するアプローチが全く違う住宅をそれぞれ体験することによって、自らが考え出すきっかけを起こしたい。
暑くても寒くてもスイッチ一つの“ホテル”では無く、住人が手間を掛け、工夫することで、より過ごしやすい環境を手に入れる。冬-10℃、夏38℃に達する厳しい気候にあって、基本的な建物の性能を高める事で、環境に対しては微々たる人間力でも対処出来るエコハウスであってほしいと願いました。最初から田舎くさく、ライフスタイルの変化や流行に流されない、飯田らしい価値観がいつまでも続く木造デザインを基本としています。
エコハウスが出来て数年経過し、途中では3.11も経験し家のあり方そのものの価値観もより人間目線に変化してきました。リンゴ並木のエコハウスに訪れる人々もハード的な学習目的から、様々な企画体験(エコカフェ)で過ごす事が多くなり、より生き生きした住宅として運営されています。家本体よりそこでされる生活が鮮明になっていく事そのものが、エコハウスの最終到達点だと思っています。
設計
- 新井建築工房+設計同人NEXT
- 新井優
新井建築工房+設計同人NEXT
〒395-0812
長野県飯田市松尾代田1324-2
Tel / Fax : 0265-24-2131
Mail : next2131@coral.ocn.ne.jp
http://www3.ocn.ne.jp/~arainext/
建築概要
建物概要
構造・階数
木造軸組・2階建・ベタ基礎
敷地面積
211.40㎡
建築面積
127.28㎡
延べ面積
188.57㎡
外皮面積
517.62㎡
主要な部位
屋根〜天井
鋼板0.35・ルーフライナー・構造用合板12・通気層30・遮熱シート・押出ポリスチレンフォーム40・構造用合板12・高性能グラスウール32k200・気密シート・空気層12・杉板12
外壁〜内壁
杉板15・通気層36・透湿防水シート・火山性ガラス質複合版12・押出ポリスチレンフォーム40・構造用合板12・グラスウール32kg100+20・気密シート・せっこうボード12.5・珪藻土
床〜地盤面
蓄熱コンクリート150・押出ポリスチレンフォーム50・防湿シート・砕石120
開口部
建具の構成
既製アルミ樹脂複合サッシ・木製サッシ
ガラスの仕様
ペアガラスLow-E
日射遮蔽部材
日射遮蔽格子戸
断熱補強部材
断熱障子
自然エネルギー
太陽光発電
3.12kW・屋根面設置
太陽熱利用
①:屋根空気集熱式ソーラーシステム(屋根全面集熱・空気熱源HP給湯器・給湯用貯湯タンク420L)
地中熱利用
南棟では三和土の熱容量を利用
消費エネルギー
電気
①の空気熱源HP給湯器
主要な設備
バイオマス燃料
②:ペレットストーブ(7.5kW)/③:ペレットストーブ(3kW)
暖房方式
北棟:①による空気集熱式太陽熱暖房、南棟:②による暖房
補助暖房
③のペレットストーブ使用
蓄熱 床下空間利用
北棟:①による床下空間での空気搬送/南棟:廃熱を蓄熱性のある土間に通すことで熱回収
全般換気方式
北棟:第1種換気(①の集熱時)と第3種換気(①の非集熱時)で切り替わる
南棟:第1種換気(全熱交換)
サーキュレーター
シーリングファン
給湯方式
①のソーラーシステムによる
環境性能
| 熱損失係数 Q値(平成11年基準値) | 1.7W/㎡K(2.4) |
|---|---|
| 夏期日射取得係数 μ値(平成11年基準値) | 0.052(0.07) |
| 外皮平均熱貫入率 UA値(平成25年基準値) | 0.57W/㎡K(0.75) |
| 冷房時の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mC値 | 9.66W/㎡K |
| 暖房期の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mH値 | 11.22W/㎡K |
| 実開口面積比率・開放面積比率 | 19.2%・33.8% |
| 相当隙間面積 C値 | 2.0㎠/㎡ |
| 太陽光発電パネル容量 | 3.12kW |




















