エコハウス紹介
山形県ってどんなところ?
エコハウスを建設した全国20の自治体の中では、人口約120万人の山形県と石川県が最大です。山形県は寒暖の差が大きいので、冷暖房などの家庭でのエネルギー消費が多く、県全体の温室効果ガス排出量の2割を占める家庭部門での削減が急がれています。
そこで県では、①県産材の活用、②ヨーロッパの先進国レベルの環境基本性能、③太陽光発電・太陽熱・木質バイオマスの利用、という三本柱をコンセプトに設計案を募り、敷地も市の中心ではなく、周辺に雑木林のある市の郊外を選びました。
山形に建ったヨーロッパ型のエコハウス
選定された設計案は、全22のエコハウスの中ではヨーロッパにおける環境共生型住宅の考え方に最も近いものになりました。ドイツやスイスを中心とする国々は、「建物から外に逃げるエネルギーをどこまで小さくできるか」という課題に長年取り組んでいます。どこかスイスと風土が似ている山形県にふさわしいエコハウスです。
同じ広さの建物ならば、外皮つまり表面積が小さい方が断熱には有利です。そこで山形エコハウスは、魔法瓶のように床下、外壁、屋根を断熱材で包み、隙間もないようにして、断熱性能のQ値は全エコハウス中で1番の0.7、隙間の少なさC値は0.96で2番と大変に優秀です。詳しい断熱材などの情報はこちらへ。
エンジニアリングによる設計と最新の設備
断熱や気密ばかりでなく、顕熱熱交換による全館換気、ペレットボイラーと液式太陽熱集熱パネルの熱を貯湯して暖房と給湯に使用するなどの、建築と設備が一体となった設計がされています。その結果、建物に使用された76㎥の木材にCO2が保持され、運用時のCO2排出量をゼロにする目標も達成されています。
木製サッシに3重ガラス、顕熱熱交換換気システム、ペレットボイラーなど、高性能を支える重要な部分に、ヨーロッパ製の製品が使用されていますが、これらに匹敵する国産製品の開発が望まれます。
見学・宿泊について
当エコハウスを見学・宿泊希望の方は、電話かFaxにてご連絡をお願いいたします。
住まいの温暖化対策やまがた協議会 事務局
Tel : 023-679-3340 Fax : 023-679-3389
活動の状況
平日及び土曜日に一般の方の見学を受け付けています。山形エコハウスの性能等の説明のほか、省エネ住宅に関する相談対応も行っています。
見学時間
10:00~16:00(日曜、祝日、年末年始を除く)
お問い合わせ
特定非営利活動法人 環境ネットやまがた
電話番号 023-679-3340
また、より多くの方に山形エコハウスを知っていただくため、環境に関する研修会や市民講座等のイベントを随時開催しています。これまで、エコハウス見学会や省エネ住宅に関する研修会、太陽光発電や木質バイオマス等の再生可能エネルギーに関する研修会、緑のカーテン・エコキャンドル作りなどの体験型の講座など、様々な講座を行っており、多くの方に参加いただいています。イベント開催情報はホームページ「山形県のエコ住宅」に随時掲載されています。
東北芸術工科大学との連携
このエコハウスの建築当初から連携して活動している東北芸術工科大学では、建物完成までの経過や性能情報などをブログ「山形エコハウス~eco house report~」で公開しています。また、一般家庭へのエコハウス普及に向けたプロトタイプの設計・建築にも取り組んでいます。
設計者の意図
東日本大震災以降、エネルギーを取りまく状況は大きく変わってきています。日本の住宅では、エネルギーの大部分が暖房に使われますが、今までの日本の家は、エネルギーに対してあまりに無自覚でした。エネルギーを使うことが当たり前のように思われていました。しかし、地球温暖化の抑制のためには、化石燃料の使用を抑え、二酸化炭素の排出量を抑えなければなりません。EUでは、2021年にはすべての新建築物にゼロエネルギーに近い性能を義務付けるべく、各国で取組みがなされています。日本の住宅では、そこまでのレベルを求められてはおらず、世界と比較して遅れているのです。山形県エコハウスは世界標準の性能を有し、夏涼しく冬暖かい、心地よい空間造りを目指しました。「木で家をつくる」、「住宅を省エネルギー化する」、「自然のエネルギー(再生可能エネルギー)を使う」の3つのコンセプトのもと計画が進められ、建物の性能の計算や自然エネルギーの有効利用のシミュレーションを行い、断熱材の厚さや庇の出、通風を考慮した窓の位置等を決めました。庭も山形県の里山の原風景を想起させる樹木を、夏には緑陰をつくり冬には日差しを通すよう効果的に配置しています。住宅を造る材料としては、豊かな山形県の森の木材を利用しました。地域の産業を循環させることで環境負荷の低減につながり、地域のエネルギーの問題を解決し、地場産業の活性化を高めることを意図としました。結果として、このエコハウスはエネルギープラスの住宅となり、カーボンニュートラルを実現しています。そして杉板張りの外観は、経年変化とともに人々に印象を深く刻んでいくでしょう。
設計
- 羽田設計事務所
- 水戸部裕行
羽田設計事務所
〒990-2414
山形県山形市寿町11-15 ダイヤ48寿町ビル
Tel : 023-622-2818 Fax : 023-641-2404
Mail : hada@hada-sekkei.jp
http://hada-sekkei.jp/
建築概要
建物概要
構造・階数
木造軸組・2階建・ベタ基礎
敷地面積
567.83㎡
建築面積
149.54㎡
延べ面積
208.15㎡
外皮面積
525.61㎡
主要な部位
屋根〜天井
鋼板0.4・透湿防水シート・構造用合板12・通気層36・透湿防水シート・構造用合板12・グラスウール24k400・気密シート・せっこうボード9.5・EP塗装
外壁〜内壁
杉板30・木毛セメント板15・通気層18・透湿防水シート・グラスウール24k100・構造用合板9・グラスウール24k200・気密シート・杉板張り30
床〜地盤面
杉板50・床下空間550・土間コンクリート200・断熱材カネカライト100・防湿シート・砕石150
開口部
建具の構成
既製木製断熱サッシ
ガラスの仕様
トリプルガラス(アルゴン封入)
自然エネルギー
太陽光発電
5kW・屋根面設置
太陽熱利用
①:屋根液集熱式ソーラーシステム(太陽熱集熱パネル6㎡・貯湯槽650L)
消費エネルギー
電気
②:エアコン 2階(冷房能力4kW:COP=4.5、暖房能力5kW:COP=5.1)、展示室(冷房能力2.2kW:COP=5.4、暖房能力2.5kW:COP=6.0)
主要な設備
バイオマス燃料
③:ペレットボイラー(7kW)・①の太陽熱用貯湯タンクの補助用として使用/④:ペレットストーブ(定期更新しているため能力不明)
予備や展示用の設備
④のペレットストーブ
暖房方式
①・③により貯湯槽(650L)に貯めた温水を循環し、床下のラジエーターから放熱
補助暖房
④のペレットストーブ
蓄熱 床下空間利用
暖房時に貯湯タンクより温水が供給され、床下ラジエーターから自然対流により放熱
冷房方式
②のエアコンによる冷房
全般換気方式
第1熱換気(顕熱交換)
給湯方式
①と③を組み合わせた給湯システム(暖房にも併用)
環境性能
| 熱損失係数 Q値(平成11年基準値) | 0.7W/㎡K(2.4) |
|---|---|
| 夏期日射取得係数 μ値(平成11年基準値) | 0.042(0.07) |
| 外皮平均熱貫入率 UA値(平成25年基準値) | 0.32W/㎡K(0.75) |
| 冷房時の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mC値 | 9.93W/㎡K |
| 暖房期の単位日射強度あたりの日射熱取得量 mH値 | 13.13W/㎡K |
| 実開口面積比率・開放面積比率 | 8.4%・17.8% |
| 相当隙間面積 C値 | 1.0㎠/㎡ |
| 太陽光発電パネル容量 | 5.00kW |



















